本質思考
みなさんこんにちは!授業力向上委員会会長(現在の会員は私だけ(笑))橋本雅由と申します!本日は生徒への記述力対策がテーマです。先生がたの授業の参考になる「すぐに使える!」
というネタをお伝えしていきますね!
本日は、
「本質思考」
です。
この言葉だけでは、お伝えしたいことすべてを一度にお伝えできませんが、言い換えるとしたら、
「突き詰めていくとたどり着く場所まで突き詰めきる考え方」
と、こんな感じでしょうか。
私は、小学生が受験する中高一貫校の記述対策の授業を担当する機会が多くあります。これを書いている本日も、川崎で朝から小学6年生相手に
「意見文対策講座」
をおこなってきました。
その道の識者がしたためた文章に投げかけられた、
高い視点から生まれた「本質」
を、齢(よわい)まだ11か12の生徒たちが、
身近な例に置き換え、これからにどう生かすかを考え、
まだまだ不器用な文たちで精いっぱい表現する。
そんな講座です。
でも、こんなふうに簡単な言葉でまとめるほど、
簡単なことではありません。
- 原稿用紙の使い方は正しいか
- 誤字脱字はないか
- 字数は足りているか
- 条件は守っているか
- 問題の文章に関連付けて書かれているか
- 初めて読んだ人にもきちんと伝わる内容であるか etc……
様々なハードルを越えながら理想的な文章を書く作業は、「忍耐」の連続。
どんな言葉を紡げばいいのか。
やっと書き上げたものも、読み返せばほころびだらけ。
添削は悔しく、次の筆を重たくさせる。
そのぶん、
「よく書けた」
の一言が、
どれだけ輝いた目を生むことか。
教える側も忍耐。教わる側も忍耐。
この歳で「本質」なんていったって、心から実感した本物であるはずがありません。
でも、文章を書くということを教えていると、たとえそれが表面的なものに過ぎなかったとしても、
「本質」を突き詰めて思考させたい。
やっぱり大事なことはいつの時代も変わらない。
そういう思いに満たされていきます。
なぜなら、生徒たちは、素直な目で、
それらを精一杯吸収しようとまっすぐな姿勢を私にぶつけてくれるからです。その姿勢があれば、たとえすべてが伝わらなかったとしても、って思ってしまうんです。
本日の問題の中に、こんな問題がありました。
問
あなたは普段、人とのかかわり合いについてどのようなことを意識していますか。そのように意識している理由としてこれまでの生活体験をあげながら、後ろの[注意事項]に合うように考えや意見を書きましょう。
[注意事項]には、字数や段落数の指定、原稿用紙の使い方の指示などが書かれています。
それよりも、
「人とのかかわり合いについてなんて、日頃意識するくらい大人だったかな?小6の自分は。」
なんて考えてしまうくらい、「本質」を問われている問題ですよね。
そこで生徒たちから出てきた文は、
「言葉遣いに気を付けています。」
「相手の気持ちを考えるようにしています。」
「相手を傷つけないように気を付けています。」
「いろいろな人と 関わるようにしています。」
優秀です。でも、表面のみ。
その理由は、
「言葉遣いで失敗したことがあるからです。」
「相手の気持ちを考えるのは大切だからです。」
「以前、そのようなことがあったからです。」
「自分の性格は人見知りしない性格だからです。」
そのあと、具体的な体験が一生懸命つづられ、ラストは、
「だから、言葉遣いに気を付けていきます。」
「だから、相手の気持ちを考えて過ごしていきます。」
「だから、・・・・・・」
というように、そのままエンディングです。
本質に触れないまま、こんなようなことを書いておけばいいかなっていう内容で
見た目は形になって、書き終える……
そういう生徒たちに、きちんと「本質思考」を伝えるんです。
なんのために?誰のために?
そういうことを、すぐにはわからなくても、
きちんと考える機会を与えるんです。
教師:「言葉遣いに気をつけるということは、結果的には何を大切にしていることになるんだろう?」
生徒:「友達の気持ち?」
教師:「そうだね。ということは、他の人の気持ちを大事にしながら話すっていうことだよね?では、なぜ他の人の気持ちを大事にするといいのだろう?」
生徒:「喧嘩になっちゃうから」
教師:「ははは(笑)そうか、相手の思い通りにならないとあいてのきげんがわるくなるってことかな?でも、それはちょっと違うかな。もしそれが正しいことなら、反対から考えた時に、『自分の思い通りにしてくれなかったら喧嘩を吹っかけて当たり前ってことになる』だろ?」
生徒:「そっかぁ」
教師:「大事なのは、お互いがお互いを思いやることで、相手の意見がどういうものか、きちんと考える機会がお互いにできるということじゃないかな?お互いが力を合わせて何かの課題に立ち向かっていくうえで、お互いの価値観や文化の違いを乗り越えていくことって絶対に必要になるよね?そんなとき、相手の気持ちが大事できない人たちばかりで、果たして目標を達成することができるかな?」
生徒:「たしかに」
教師:「きっと、こういうところに本質があるんだよ。『人とかかわり合う』のは世の常。生きていくうえでは避けて通れない。生まれた瞬間からその人はだれかとのつながりの中にいるんだ。そして、これからたくさんの人との出会いと別れがある。そういうものがひとつひとつ意義深いものになっていったら、きっと世の中やそれぞれの人生はもっといいものになるよね。」
生徒:「うん、たしかに」
教師:「だから、言葉遣いは大事なんだね。相手との関係をまるくする。相手との距離感を適切に調節するのは言葉の持つ大事な力だ。みんなで生きていく社会だからこそ、相手への思いやりが大事になる。これがみんなの意識した行動の本質的な大切さなんだね。」
こういう話をしているとき、生徒は真剣な表情をして、さらにたくさんのものを主体的に吸収してくれている、そんな印象を受けます。多感であり、好奇心のスイッチがさびていない若い時期に、こういう「本質論」は大事ですね。たくさんの子供たちが、目の前の様々な手段の先にある目的、そして、その目的の本質を考えながら賢く行動できるように導く。おこがましいですが、大事な教師の仕事だと思います。