教師の生徒対応のヒント⑤
みなさんこんにちは!授業力向上委員会会長ハッシーこと、橋本雅由です。本日もちょっと話がそれて、生徒対応のネタになることを書きます。
これからも、
「すぐに使える!」
というネタを用意して様々な具体的経験をお伝えしていきますね。
本日は、
「どこまで教えるか」
です。
本日は、生徒の欠席フォローのための個別対応の中で気づいたことを書きますね。
教科は、珍しく 「数学」 です。
以下のような問題です。
【問題】
大人2人子供3人で遊園地に行き、入園料の大人料金は子供料金より300円高く、全員の合計金額が5900円でした。大人料金と子供料金はそれぞれいくらでしょうか。
中1の方程式の問題。ある女の子が、
「わからない……」と、お手上げ状態でした。
ここで、ポイントになるのが、「どこまで教えるか」です。
新米の先生がたにありがちなのが、
「親切に、ぜーんぶ教える」
というパターン。
相手がよっぽど困っていて、本当に一(いち)から十(じゅう)まで教えてあげる必要がある場合だって、もちろんあります。
でも、それはあくまでも最終手段。
生徒に演習させる内容は、まず復習であることが多いですし、その問題を解くために必要な、
使うべき知識をどう使うか
というのを、生徒たちが自分で判断できるかを、まずは確かめるところからがスタートです。
要は、自分の頭で考えられるところはしっかりと考えさせるように導くこと
がまずは大切なんですね。当然、それが上手にできた場合は、生徒はその問題を
自分の力で解けるかもしれない
と考える確率が高くなります。
今回の問題で悩んでいた女の子は、一生懸命勉強するけれど、頭があまり柔らかくない、つまり不器用なコツコツ型の女の子でした。
その子にとっての対応の私なりの正解は、
「式の意味を教える(イメージさせる)」
という対応です。
私は、以下のように対応しました。
「わからない数をxと置くというのはわかるよね?わからないのは文字で置く。いろんな数字が当てはまる可能性を文字で残しているんだね。でもさ、大人料金と子供料金の2つもわからない数字があるから、もし、それぞれを別の文字であらわしたら、どうやって数字を決定していいかわからなくなっちゃうよね?」
「だから、ここで気を付けるべきなのは、ひとつのわからない数字をxと置いたときに、もう一つの数字も、そのxを使って表せないかって考えるんだ。わからない文字が一つなら、方程式を作って、周りの情報から、そのxが何になるかが決められる。」
「今回の文章では、ひとつの数字をもとに、もう一つがどんな数字になるかっていうヒントになるようなものがないかな?言い換えれば、あるひとつの未判明の数値を基準として、もう一つの数値を表せるようなヒントがないかってこと。どう??」
その女の子は頭の中で、わからない数値を2つ探します。
当然、ここで、
「子供料金」と「大人料金」の二つを見つけるわけです。
そして、「どちらかを基準にどちらかを表すようなヒント」という促しから、
「入園料の大人料金は子供料金より300円高く」という文がそれに当たることにきづくわけです。
子供料金をxと置けば、大人料金はx+300と表せます。
こういう式で表せるということに、その生徒は、自分の力で気づくわけです。でも、こう言うと、「いや、あなたが教えてるからでしょ?」と、ちょっと誤解をされてしまいますかね?
こう言えばどうでしょう?
この式を、教師のフォローをもとに、その生徒が自分で気づいて、自分でノートに書くわけです。
そこまで見えれば、あとは
「あ~!」
と、一人でサクサク式を書いて、答えまでたどり着いていました。
2x +3(x+300) = 5900
2x +3x+900 = 5900
5x = 5000
x = 1000 つまり、子供料金が1000円
大人料金は1300円
というように。
私は、式の立て方も、答えまでの導き方も、一切フォローはしていません。
だって、それは習っていて、彼女自身の力でできることでしたから。
私は、「式が表す内容をイメージさせたかった」だけです。
別の言い方をすれば、「その文章がどのような式で表せるのか」
という考えが正解に至るまでのきっかけを与えたにすぎません。
「複数の不明な数字は、時にひとつの文字を使って、工夫して表すことができる。」
それをその女の子は知ることができました。そして、
「そういう意識をもって、問題文に向き合うという経験値」
を得られたわけです。
おまけに、
式を自分で書いて、自分の力で答えまで結びつける
ということまで体感させているわけですから、
そりゃ、自信になりますよね(笑)
彼女の、「あ~!」といって、サクサク書き始めた様子と、その答えが出た時の気持ち良い表情が、
「よーし!」と、
こちらも気持ちよくなるくらいでした。短いですが、充実したやりとりでした。
「生徒の頭をどう動かし、どこまで自分の力で答えに近づけさせるか」
そういう我々教師のアプローチの仕方が、自分の力で考える子をたくさん育てることにつながります。
ただ上手に教え切る先生ではなく、生徒が自分の力で考えるよう上手に導ける先生でありたいですね。